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平成29年6月度 組織的犯罪処罰法改正

〜テロ等準備罪の新設〜

テロ等準備罪の新設を含む『組織的犯罪処罰法改正案』は、5月23日に衆議院で可決した後、6月15日の早朝に参議院において賛成多数で可決成立しました。この改正法は、テロを含む国際的な組織犯罪を未然に防ぐための、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するために必要な国内法を整備するものです。

必要性

テロ対策の核心は、事前に犯行の芽を摘むことです

3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックの安全な開催のため、また各国で頻発するテロ等の凶悪な組織犯罪、国際犯罪を未然に防ぐためには国際協力が必要です。そこで国際社会と連携し、テロ対策などで国際協力を定めた国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するために必要な国内法の整備が不可欠となりました。現在、世界の187か国・地域が条約を締結していますが、国連加盟国(193か国)の中で未締結国は日本を含め11か国であり、先進7か国(G7)の中、未締結なのは日本だけです。

成立要件

一般の方々は処罰対象になり得ません

テロ等準備罪は、(1)犯罪の主体をテロ集団、麻薬密売組織などの組織的犯罪集団に限定し、さらに、(2)一定の重大な犯罪を計画することに加えて、(3)犯罪の実行準備行為が行われた場合に初めて成立し、処罰の対象になります。つまり、何もしていない、多くの普通に暮らしている一般の人たちには関係の無い法律なのです。

(1)組織的犯罪集団とは
テロ集団・暴力団・麻薬密売・人身売買組織など、構成員らの結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大な犯罪を実行することにある団体を言います。
(2)重大な犯罪の計画とは
死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役・禁錮に当たる罪について、組織的犯罪集団の構成員らが指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って特定の犯罪を実行することについて、具体的かつ現実的な合意をすることを言います。
(3)実行準備行為とは
組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の計画に基づいて行われる、計画をした犯罪を実行するための準備行為とされ、犯罪資金の調達や犯行に使う凶器・弾薬等の手配、犯行現場の下見などの行為を言います。

『日本が監視社会になる』ことは、決してありません

  • 例えば現行法では、テロ組織が水道水に毒物を混入することを計画し、実際に毒物を準備した場合であっても、この時点では処罰することが出来ない場合があります。「テロ等準備罪」は国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の求める、このような重大な犯罪の計画・準備行為をした段階で処罰することを可能にします。
  • つまり、『一般の会社や市民団体、労働組合の正当な活動は対象外であり、いわゆる内心を処罰するものではありません』(菅 官房長官)
  • 更には、『捜査機関が国民の動静を常時監視する監視社会になるなどと言うことは決してありません』(安倍 内閣総理大臣)
  • また捜査についても『国民の信頼に応えるべく適正の確保を図りつつ、テロを含む組織犯罪対策を推進するよう都道府県警察を指導していきます』(坂口 警察庁長官)
  • 居酒屋などで「上司を殴ると意気投合」しても処罰されませんし、一般のメールやSNS上のやりとりで処罰されることはあり得ません。

「テロ等準備罪」の対象犯罪は?

かつての「共謀罪」の法案では、当時、615あった懲役・禁錮4年以上の犯罪の全てを対象にしていました。今回の法律案は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)において、各国の法律で対象犯罪を「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪」とすることが出来る、と規定していることに着目しました。

犯罪の主体を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に限定し、明確にした上で「重大な犯罪」に該当するもののうち「組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるもの」のみを限定的に規定することによって、懲役・禁錮4年以上の676の対象犯罪を277に限定しました。また身近な犯罪も対象のため、「不安を拭うような丁寧な説明と制度の厳格な運用努力」が求められるのは当然です。


277の対象犯罪の代表例
① テロの実行
組織的な殺人、現住建造物等放火、航空機を墜落させる行為、拳銃等の発射、サリン等の発散、流通食品への毒物の混入
② 薬物
覚醒剤、ヘロイン、コカイン、大麻の輸出入・譲渡等
③ 人身に関する搾取
人身売買、集団密航者を不法入国させる行為、強制労働、売春をさせる行為、臓器売買
④ その他の資金源
組織的な詐欺、高金利の契約、通貨偽造、マネーロンダリング
⑤ 司法妨害
偽証、組織的な犯罪に係る証拠隠滅、逃走援助
テロ等準備罪の法定刑

対象犯罪が

  • 死刑又は無期若しくは長期10年超の懲役・禁錮の刑の場合は、5年以下の懲役・禁錮
  • 長期4年以上10年以下の懲役・禁錮の刑の場合は、2年以下の懲役・禁錮

※277の対象犯罪のうち、テロの実行に直接係るものだけでも100以上あり、テロ行為が対象犯罪の代表例であることは明確です。

成立までの経緯

  • 平成15年政府は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)が求める国内法の整備のため「共謀罪」を設ける法案を初めて通常国会に提出。しかし審議は行われず同年秋の衆議院解散によって廃案。尚、この条約は通常国会で自民・公明、当時の民主党、共産党などの賛成で承認された。
  • 平成16年の通常国会に法案が提出され、翌年(平成17年)の通常国会で初めて審議が行われたが、衆議院解散によって廃案。
  • 平成17年の特別国会に法案を提出し、30時間余の審議が行われた。更に継続審議となった平成18年の通常国会でも活発な審議が行われた。法案の中身としては、処罰の対象を単に「団体」とし、「共謀」(犯罪の実行に向けた合意)があれば処罰できるとした。
  • 対象犯罪は、長期4年以上の懲役・禁錮が科せられる600余りに上り、「市民団体や労働組合も対象になる」、「居酒屋で気にくわない上司を殴ることを合意しても処罰される」などの懸念が示された。
    そこで与党と民主党は処罰対象を「組織的犯罪集団」に限定し、処罰には、合意に加えて一定の準備行為なども必要とする修正案をそれぞれ提出したが、修正協議はまとまらず決裂した。
  • 平成21年の衆議院解散によって、審議未了のまま廃案となる。
今国会での動き
  • 東京オリンピック・パラリンピックの2020年開催を控えて、政府は「共謀罪」の名称と構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設し、「組織的犯罪処罰法」を改正する方針を固めた。
  • 今国会では、衆参予算委員会等で法案提出以前から論戦が行われ、公明党からは、対象犯罪が600余りになることから「一般の人が不安を覚える」との指摘があり、対象犯罪を277に絞り込み、3月に法案を国会に提出した。
  • 衆議院法務委員会では、自民・公明両党と日本維新の会が修正協議を行い、「テロ等準備罪」の取り調べにおいて録音や録画の在り方を検討する旨を附則に追加すること等について合意し、5月19日の衆議院法務委員会で修正の上、可決した。
  • 5月23日の衆議院本会議で、自民・公明・日本維新の会の賛成多数により可決され、参議院へ送付された。
  • 5月29日の参議院本会議において安倍内閣総理大臣も出席して趣旨説明と質疑が行われ、その後、参議院法務委員会で審議が行われた。
  • 6月13日の午後、参議院で金田法務大臣に対する問責決議案が提出され、法務委員会における審議は停止した。
  • 6月14日参議院では、議院運営委員長の解任決議案が、また衆議院では、内閣不信任決議案がそれぞれ提出され、与野党が全面対立した。
  • 6月15日参議院では、与野党対立する法案としては10年ぶりに委員会での採決を経ずに、これまでの審議状況を法務委員長が本会議において中間報告を行い、その後、朝の本会議で法案審議・採決が行われ、自民・公明・日本維新の会の賛成多数で可決成立した。